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チェコ・ズブジー刺繍について

(このページは今後、拡充していきます)


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ズブジー刺繍は、チェコ・北モラヴィア地方に位置する

ズブジーという街で育まれた伝統の白糸刺繍です。

ミシンなどの機械は使わず、全て手作業で制作されています。



白糸刺繍とは、白い生地に、白い糸で刺す刺繍の事で、

ヨーロッパ各地で好まれたこのジャンルの刺繍は、それぞれの国と地域で発展し、

代々受け継がれてきました。

代表的なものだと、ノルウェーのハルダンゲル(ハーダンガー)刺繍、

デンマークのヘデボ(ヒーダボー)刺繍、

ドイツのシュヴァルム刺繍も素敵です。



どの刺繍にも、その美しさを特徴づける素材や図案、技法の組み合わせがありますが、

ズブジー刺繍でのそれは、主に以下の3つとなります。



1)綿ローンという薄手の平織生地に、細やかな刺繍・ステッチを施す。

2)生地から糸を抜くことで小さな格子状の網目を作り、さらにそこに模様を付け加える。

3)透かし彫りのように模様の輪郭を切り取り、大小の空間を作る。



こうして制作されるズブジー刺繍は、繊細さと透明感が際立ち、

その清楚な美しさは、チェコ刺繍の最高峰と称えられています。

現在では、ほんの数名しか制作を行っておりません。





チェコ・ズブジー刺繍作家 マリエ・ピルハロヴァー氏との出会い



私がズブジー刺繍と出会ったのは、2009年の5月、プラハで催された手工芸作品の展示販売会でのことでした。

”あそこに刺繍がある”

そう思って近づいた私は、衝撃を受けました。

それが全て手作業であること、

そして、膨大な時間が費やされた作品群であることに圧倒されたのと同時に、

美しさにもすっかり魅了され、言葉がありませんでした。



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~初めて目にしたズブジー刺繍の作品~



しかも刺繍の前には、今ここで制作している人がいる!

是非お話を聞かせてもらいたいと思った私に、マリエ・ピルハロヴァー氏は、快く応じてくれました。

(今ではお互い何でも話せる先生と生徒の関係です。)


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~マリエ・ピルハロヴァー氏(手前)と お友達のイレナ・シュパネヘロヴァーさん~



さて、刺繍をしている女性というと、エレガントで優雅な人、大人しくて口数も少なく・・・

こんな風に想像されるかも知れません。

ですが、マリエ先生は、明るくあけっぴろげで、ユーモアもたっぷり。

本当に気さくな方で、作業の見学はもとより、色々なことを聞かせてくれました。


ズブジー刺繍が生まれたズブジーの出身で、一生ズブジーで暮らしたいと思っていること。

刺繍をしていると、どんなに心が安らぎ、新たなエネルギーが湧いてくるか。

過去の刺繍作家たちの作品を見ると、その美しさにため息が出ること。

そうした人たちが残した図案を自分の作品にアレンジしていくと、先人との心や魂の繋がりを感じること。

現在ではこの刺繍を販売できるレベルで刺せる人が、5名程度しかいないこと。


お友達のイレナさんも加わり会話が弾みます。

”是非ともコンサートで着る燕尾服のポケットに入れるハンカチを譲って欲しいです”

とお願いしてみると、

マリエ先生は 「もちろんよ、ここからどれでも好きなのを選んで!ガハハハハ」 


何だかこちらもつられて笑ってしまいましたね。

こうして私は、ズブジー刺繍とマリエ先生に出会ったのでした。


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~会場の壁に展示してあったハンカチなどの作品です~



その日の帰り道、自分のカバンの中には、あのハンカチが入っている。

本当に譲ってもらって良かったんだろうか?

しかしすごい作品ばかりだったし、すごい人がいるもんだな。

連絡先をもらったから写真をお送りしないと。

また会える日はいつか来るかな。


そんなことが頭の中を駆け巡り、すっかり興奮状態。

3回も地下鉄を乗り間違えて、ようやく家に辿り着いたのでした。


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~この日譲っていただいたハンカチ~




翌日、ハンカチの写真等をお礼の言葉と共にメールで送ると、

マリエ先生からすぐにお返事が。

そこには 「あなたの衣装にピッタリくるハンカチのデザインをひらめいちゃった。作ったら送るわ。」 とありました。

それからしばらくして、本当にハンカチが届き、

これには大変恐縮しましたね。


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~マリエ先生が私の為に作ってくれたハンカチ。 コンサートの時は必ずポケットに差しています~



マリエ先生は、1度しか会ったことのない私に、なぜこんなに良くしてくれるのでしょう?

率直に伺ってみると、先生答えは2つでした。

「私の刺繍にこれほど感動してくれた人は、多分あなたが初めてだから。」

「私も音楽院でピアノを勉強したいと思ったことがあって、今も音楽が大好きだから。」 

お送り頂いたハンカチを今度は、ポケットチーフとしてアレンジした写真をマリエ先生にメールすると、

「こんなの見たことないわ。すごく素敵。」

「やはりあなたは、刺繍に対する感性とかセンスがある人だと判ったわ。」

とのお返事でした。


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~2枚の葉の間からお花が顔をのぞかせているようにアレンジ~



マリエ先生のメールを繰り返し読んでいると、自分の幸運に信じられない思いがします。

”何かお返しの品物をお送りしないと。”

そう思った私の頭に真っ先に浮かんだのは、刺繍糸でした。

先日お会いした時に、「フランスDMC社の刺繍糸が1番好きだけれど、地元のズブジーでは買えない。」

「プラハに来た時に見つかったら買えるけど、なかった時はガッカリするわ。」

こう言われていたのを思い出したからです。


そこでまず、プラハの手芸用品店を何軒か回り、刺繍糸を調達。

それから”自分でも何か先生に使ってもらえそうなものを作りたい”と思い、

刺繍の道具を入れるのに良さそうな布のケースを縫うことにしました。

私なりに花模様の刺繍も入れて・・・


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~簡単だけれど素敵な作品のつもりで作りました~



刺繍糸が詰まった布ケースがズブジーに届くと、早速マリエ先生からメールがあり、喜びの言葉が沢山。

そして最後に、「あなたなら絶対ズブジー刺繍をマスターできる。」

「刺繍枠を送るから、受け取ったらすぐに始められるわよ。」 とありました。

”え?”


こうして私はズブジー刺繍をマリエ先生から習うことになったのでした。


この続きはまたの機会に。


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~先生のお宅でレッスンを受けているところ~




以下私の作品とマリエ・ピルハロヴァー先生の作品です。



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制作&撮影:竹内英仁



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制作&撮影:竹内英仁



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制作&撮影:竹内英仁



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制作&撮影:竹内英仁






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制作&撮影:マリエ・ピルハロヴァー



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制作&撮影:マリエ・ピルハロヴァー



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制作&撮影:マリエ・ピルハロヴァー



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制作&撮影:マリエ・ピルハロヴァー





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